年金を自分で掛けたときのメリットを考える。
衆議院選挙後、103万円の壁についてのニュースが活発に報道されていますが、103万円の壁の話にまぎれて、106万円の壁の話が盛り上がってきています。ご存知でしたか?
103万円とか106万円とか、とても紛らわしいですが、103万は税金の話、106万は年金の話です。
さて、今盛り上がりはじめた、106万円の壁問題。
なにが、問題かというと、いままで、
- 収入
- 1週間の労働時間
- 会社の規模
3つすべてが基準を満たさない場合、社会保険(年金、健康保険、介護保険)に入らなくて良かったのですが、今、年収や会社の規模関係なく、1週間20時間以上働く人は社会保険(年金、健康保険、介護保険)に加入するようにしませんか?という話が出ています。
そうなると、将来年金の金額は増えるけど、今の手取りが減るので困る!との声
しかし、これは、働く人だけでなく、雇用主も、困る!と言っています。
なぜでしょう?
それは、社会保険料の半分は、雇用主が払うことになっていて、働く人の負担が増えると、雇用主の負担も増えるからです。
誰もが困るならやめればいいのに、となりそうですが、もう一つ困っていることがあります。それは、将来、年金額が減ってしまう。自分たちは年金もらえないかも…。という声です。
さすがに、年金が減ることはあっても、なくなることはありません。
実は、基本、年金制度については、今生まれた子が100歳になるまで、いくらみんなから
集めて、いくら払えばいいか、を常に考えているからです。
また、それについての資料を5年ごとに、最新情報を元にブラッシュアップしています。
それが、「財政検証」といわれ、令和6年7月に発表されました。
ということで、現在話し合いが進められているのですが、どうなるかは、現在わかりません。
現在考えられていることが実施されたとしたら、あなたは、どうするか?
考えてみませんか?
まず、手取りは減ります。それでは、手取りが減った上で、どのようなメリットがあるのでしょうか?
今回は、年金についてのみ、みていきます。
まずは、厚生年金をかけることで、もらえる可能性のあるものとして、
- 65歳からの年金が増えます。(早くもらうことも、寝かせて増やすこともできます。)
- 掛けている時に、該当する障害をもつことになった場合、一般的に事故等から1年半たった時から、障害年金がもらえます。
(制度は別ですが、健康保険から、年金が出るまで、傷病手当が出ることがあります。)
一般の生命・医療保険で、障害者になったら◯万円もらえる。というものはありますが、一生年金をもらえるものは、聞かないですよね。 - 掛けている時に、万が一本人が死亡した場合、遺族年金が該当者に出ます。
このように、年金は、老後の備えだけでなく、今の備えにもなるものです。
また、御夫婦で自営業の場合、毎月、国民年金掛金を(令和6年度1ヶ月16,980円)2人でそれぞれ掛けなければなりませんが、この金額より安く、国民年金と厚生年金をかけることができます。
それでは、A子さん(50歳)でみてみましょう。
A子さんは、
小4(10歳)と中1(13歳)の子どもがいて、
夫(48歳)は会社員 年収450万円です。
次男の大学卒業まで、学費を少し稼ぎたいと思っています。目指すは、あと12年です。
現在 時給は1,050円
1日4時間、週20時間
扶養の範囲で、毎月84,000円、 年収100.8万円
現在の制度では、社会保険にはいる義務もないため、第3号被保険者です。
(第3号被保険者は、掛金を掛けずに国民年金を納めたことになります。)
しかし、現在の話が現実となったとしたら、どうなるのでしょうか?
年収は、106万円には届きませんが、1週20時間働いているので、社会保険加入が義務付けられます。
まずは、毎月の掛金ですが、保険料率は18.3%と決まっているため、収入により変わります。
(厚生年金は、高い金額を長く収めると、年金が多くもらえます。)
A子さんは、毎月8,052円で、厚生年金と、自営業者等が毎月払う、国民年金掛金を(令和6年度1ヶ月16,980円)掛けたことになるため、かなりお得です。
今の金額、制度で、変わらないと仮定して見てみましょう。
1、65歳からの年金について
毎月の厚生年金保険料は、8,052円 12年(144月)で、総額1,159,488円
もらえる金額は(国民年金満額として)、
約69,000円(厚生年金)+816,000(国民年金R6で計算)=885,000(年額)
65歳から85歳までもらうと、約1770万円(長生きすればもっと増えます)
そして、健康に自信があれば、75歳まで待って、84%増額することもできます
(厚生年金か国民年金どちらかのみ増額も可能)
2、万が一、障害を持ってしまったら…
障害年金は、国民年金にもありますが、厚生年金には、国民年金より軽い障害でももらえる制度があります。(国民年金は、1.2級、厚生年金は、1.2.3級)
もちろん、厚生年金に加入している間は、国民年金も掛けていることになるため、
例えば2級の場合、国民年金から障害基礎年金816,000(国民年金R6で計算)と、
期間、収入による障害厚生年金がもらえます。また障害手当金という制度もあります。
掛けている時に、万が一 本人が死亡した場合
遺族年金が該当者に出ます。
障害年金同様、国民年金にも遺族年金はあります。ただし、国民年金の特徴として、
18歳(高校卒業まで)以下の子どもがいないと、一切遺族年金はもらえません。
しかし、厚生年金は、子どもがいなくてももらえます(一部制限あり)
そしてもう一つ…
もし、A子さんが、結婚や、出産まで、厚生年金のある会社で8年勤務していたとすると、厚生年金を20年掛けることになるため、A子さんは、65歳で年金を受給する際、なんと!ご主人の扶養に入っていたのもかかわらず、A子さんに、加給年金(加給年金とは、言い換えれば扶養手当。令和6年408,100円、月約3.4万円)が2年間(夫が65歳になるまで)プラスでもらえます。(ただし、この金額を減らそう….という話も出てきています。)
実際、毎月の手取りは減ってしまうかもしれませんが、「損して得取れ」という言葉もあります。実際、家族の関係や、自分の健康等のため、今以上に働くことが難しい場合もありますが、それらの問題がないのであれば、社会保険に入って働くことを、私はおすすめします。そして、今より少し頑張って働いて、たまにはリッチなランチをしたりして…(幸せ..)
何と言っても、歳をとると、働く場所も、体力もなくなってきます。
(がっくり..)
働かないで一生もらえる年金が少しでも多いと、ありがたいものです…(しんみり..)
いかがでしたか? 今回は、A子さんをモデルにみてきました。
ご存知のとおり、年金制度は複雑で、収入、家族構成、経歴等により、人それぞれです。
ご自分についても、考えてみるきっかけになれば幸いです。
